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アイドル刺傷事件!この現場では警備は不可能だ
代官山太郎
いたましい事件だ。アイドル出身で最近は大学生活と芸能活動を両立させ、シンガーソングライターになることを夢見ていたという冨田真由さんが、ライブ会場に入るところを、ファンだったストーカーの男性に20カ所以上を刺され意識不明の重体。容疑者は駆けつけた警察官により、その場で現行犯逮捕された。

現場のシャトー小金井は、店舗と住居の複合建築物で築40年を超えた古い物件だ。確認申請時には建築基準法の適格建物だったが、工事期間中に容積率オーバーとなって、竣工時には建築基準法の不適格建物として完成したといういわくつきの物件でもある。老朽化が激しく、大震災による崩壊リスクがあることから耐震補強工事が求められているが、店舗区分所有者の協力が得られずこれができない。また、ちょうど13年前の5月には、最上階の10Fで火事を出し、1人が死亡するという事故もあった。

なぜ物件の話を延々としたかというと、地下アイドルクラスの子たちのライブは、AKB48やモーニング娘。はじめメジャーなアイドルが使うような有名なコンサート会場や名門ライブハウスなどではなくて、こうした、警備も十分できない会場で行われるのが当たり前だからだ。当然、警備に割くコストもなく、マネージャーがいないどころか事務所に所属していないフリーのアイドル、タレントも多い。潤沢な資金があり、会場スタッフもたくさん擁するAKB48の握手会でさえ、襲撃事件(のこぎりを持った男にメンバーが切りつけられ負傷)が起きたぐらいだ。地下アイドルクラスでは、自分の身は自分で守るしかないのが実情だが、悪意を持って接近してくる人間から、若い女の子が身を守るのは至難の業だ。

今回、ツイッターのやりとりなどで憎悪を膨らませるきっかけになったともいわれるが、SNSでファンとタレントが直接やりとりできるようになったことも、ますますタレントを危険にさらす。ネットでのやりとりは文面だけに微妙なニュアンスが伝わらず、ちょっとした行き違いが大きな憎悪に火をつけることもある。大手事務所であれば、面倒なことになる前に対応を考えるスタッフもいるが、フリーに近い女の子に、お客さんであるファンンをうまくコントロールしろというのは酷だ。本来、銀座のホステス並みのお客さん操縦術が必要になるのではないか。

かといって、弱小なタレントほどファンと間近に接するイベントを行わないと生きていけない。なんとも由々しき状況である。
2016/5/23


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