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開かれたNHKを切望 記者過労死の悲劇繰り返さないで
代官山太郎
NHKの記者で入局9年目だった佐戸未和さんが31歳の若さで過労死で亡くなったニュースは、世間に衝撃を与えた。11月8日は母親の佐戸恵美子さんが、厚生労働省主催の「過労死等防止対策推進シンポジウム」に登壇、過労死遺族として講演した。なぜこんなことが起きるのか。

未和さんが亡くなったのは2013年のこと。6月の都議選と、続いて7月の参院選の報道に携わり、7月24日ごろ、うっ血性心不全を起こして急死した(翌年、過重労働が原因だったとして渋谷労働基準監督署が労災認定)。当時、NHK首都圏放送センターで都政を担当していた未和さんは、まさに取材に奔走する日々を送っていた。同月末に横浜放送局への異動が決まっていたが、23日の勤務終了後の送別会に出席後、24日未明に帰宅した後に倒れたとみられている。未和さんと連絡がつかず心配した友人が25日に自宅を訪れ、ベッドで倒れているのを見つけた。

美恵子さんはシンポジウムで涙を浮かべながら、愛する長女を失った無念の心境を述べ、長時間労働が放置されていたNHKの勤務体制を批判した。

当時、監査委員だった現NHK会長の上田良一氏は、経営陣から労災認定の報告は受けたものの、経営委員会に報告していなかった。それが公表の遅れにつながった可能性が指摘されている。未和さんの両親は、NHKが今年10月まで過労死を公表しなかったことを問題視しているが、上田氏は「監査委員の役割は役員の不正行為を報告することであり、当時は執行部が適切に対応していると判断した」と釈明、自身の判断に問題はなかったとしている。しかしNHKの石原進経営委員長は「委員会に報告してほしかった」と苦言、野田聖子総務相も判断を疑問視している。

上田氏は自ら先頭に立って再発防止に取り組むと表明しているが、二度とこのような悲劇を繰り返さないで欲しい。国民に愛される番組を多数作っているNHK。情報に関しても、公共放送だけに開かれたNHKであって欲しい。
2017/10/31


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