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名取裕子の孤独を見た!男の代わりに選んだものは
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先日のこと、近所にある八百屋さんに立ち寄った。するとお会計をしている妙齢の女性と目が合った。見覚えのある女性だが、知り合いではない。一瞬、思い出してみるとその女性が、女優の名取裕子だというのに気づくまで、ちょっと時間がかかった。

化粧ッ気のないスッピンぶりに、決しておしゃれとはいえないジャージ風の服装は、明らかにご近所にちょっと散歩がてら寄ったという風情だった。

名取といえば、現在も現役バリバリの大女優。「京都地検の女」シリーズや「法医学教室の事件ファイル」は、ドラマ低迷の昨今にあって、コンスタントに15%程度の視聴率を叩き出す、隠れたテレビ局にとっての看板女優でもある。

そんな名取のイメージは、和服やパリッとしたスーツが似合う和風美人。しかし、八百屋の店先で見た彼女は、どこか疲れた感じも伺えた。

そして、モロヘイヤを買い求めると、今度は近くのコンビニへ。すぐに雑誌コーナーに向かい発売されたばかりの週刊誌を購入。そのまま手押し車に荷物を入れて、住宅街の中に消えていった。

さながら、大物女優の日常を垣間見た瞬間だった。

そこで、改めて実感したのが、彼女の「犬好き」ぶりだった。まだ、55歳にも関わらず、手押し車で買い物に来ていたのは、キャスターに高齢の犬を乗せるためだったのだ。

以前にもこの姿は見たことがあった。もう10年近く前になるだろうか。京都の撮影所近くで、町を闊歩する名取の姿があった。撮影の合間だろうか、バッチメイクは明らかに周囲からも人目をひくほど。だが、そのときも彼女は、手押し車を押していた。そこには、犬の姿もあった。

これまで独身を貫いてきた名取は、人生のパートナーとしてオトコではなく、犬を選んだ。

長年、親の介護をしていた名取は、仕事と犬を支えにこれまでに過ごしてきた。そんな、人生の伴侶が老いを迎えると最後まで面倒を見たという。

そして、プライベートで見かけた彼女の愛犬たちもまた、老い≠フ現実があった。もはや足腰が弱り、散歩もままならない愛犬を手押し車に乗せて、外の空気を吸わせたかったのだろう。何ともいえない、女優の孤独もまた垣間見えたのだった。
2012/10/5


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