<<ほぼ日替わりコラム>>
嵯峨京子さん死す…娘・井上和香への深い愛
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先日のこと、元女優の嵯峨京子さんが亡くなられた。73歳だった。今年に入ってからがん闘病中だったということを知らずに、新聞で一報を知った。驚くほど陽気で、明るい女性だった。
嵯峨さんと言うと、名前を聞いてもピンと来ないかもしれない。往年の大映の女優で70年代には「四谷怪談」などの時代劇スターとして活躍。ところが、中堅女優として人気の渦中に、夫と結婚。そのまま芸能界を引退して、夫の経営する都内の割烹料理店で女将さんを務めていた。
嵯峨さんとの接点は、井上和香が、俳優の戸次重幸と同棲している話を確認するのが目的だった。00年代の半ばのことだ。カウンターに陣取り、ビールを飲み干して用件を切り出すと、嵯峨さんは顔色一つ変えずに、「まあ、娘のことでワザワザいらしていただいたんですか。申し訳ないです」
というや、お酌をしてもてなすのだ。そこで、同棲の話を切り出すと、
「恋愛のことは本人に任せているのでわかりませんけど、素敵な男性なんですか? だったらいいですけどね」
何とも感じのいい雰囲気で、こちらの質問をはぐらかすのだ。板場では、嵯峨さんの夫が、調理をしながら嵯峨さんと記者の様子をうかがっている光景が何とも微笑ましい。その後も色々聞き出そうとするが、以前からマスコミがことあるごとに来店するので、娘の和香は、あまりプライベートのことを話さなくなったと嵯峨さんも苦笑していた。
「でも娘もヒマな時に、仕事も手伝ってくれるんですよ」
そう話すと相好を崩して笑う嵯峨さんの笑顔が印象的だった。
それ以来、何かと言うと嵯峨さんの店を訪れて、コメントをとったこともある。店には、プロダクションの関係者などもいるときがあった。とかく芸能関係者の集まる店は、マスコミに冷たいことが多いが、まったく分け隔てなかった。それだけに、井上和香は結婚まで数々の浮名を流しても、悪く書かれることはなかった。それもすべて、スポークスマンとしての嵯峨さんのおもてなし力≠ェ、モノをいったのだろう。
最近では、恋愛やスキャンダルについての報告なり釈明なりをブログなどで一方的に済ませてしまう芸能人が少なくない。だが、取材して書くのは人間だけに、その対応次第で筆のトーンが変わるのは、ある意味自然なこと。今の芸能プロの幹部でもできないマスコミ対策をしていた嵯峨さんの娘への思いを、思い出さずにはいられない。ご冥福をお祈りいたします。2014/8/22
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