志和:すばらしい匠の技、根本一徳さん

都内・谷中の木楽庵で25日まで開催された「江戸指物展」(江戸指物共同組合主催)。最終日に、うかがいました。そうです、もうこの編集部日記でもご紹介するのが何度目かになる江戸指物師・根本一徳さんの作品と会いに、出かけてきました。
こじんまりとした、風情のある会場に着くと、やさしい笑顔の根本さんがおられました。
そして今回、嬉しい報告を聞かせていただきました。根本さんがつくった「回転化粧箱」が、「2011年日本伝統工芸士会作品展」で『首席』を受賞したのです。ふだんはパタンと閉じられた蓋を開くと、鏡が絶妙の角度で現れます。むだのない、隙のない、それでいて美しいデザイン。
江戸指物のデザインは、どこからくるのでしょうか。
「全部、指物師が考えています」と根本さん。作り手が精魂こめて考案し形にしたデザインは、外見ばかりではなく、生活の場面にフィットした使いやすさをもっています。
「いまは昔と住宅事情が違ってきて、洋間も増えてきました。なので、和室だけではなく洋間に置いても違和感のないデザインに少しずつ変わってきましたね」…伝統も時代に寄り添いながら、人々の生活を豊かにしてくれるのです。
もうひとつ、別の作品にみられた流麗な木のカーブに心惹かれた私は、いったいどうすればこんなにも美しく木を曲げることができるのか、根本さんに質問してしまいました。根本さんは笑って楽しそうに答えました。「これは、木を削りだしているんですよ」。

なるほど!カンナで木を丹念に削ることで、まるで木を曲げたかのような美しい曲線を演出しているわけです。
日本には、こんなにもすばらしい匠の技が生きているのです。

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