マロン:裕木奈江の踏まれた靴

裕木奈江が舞台「無頼の女房」に出演するというニュースを聞き、ある光景が思い出された。

90年代前半、私は現在とは別名だったが映画の撮影現場に出入りしていた時期があった。高橋伴明監督「獅子王たちの最后」の現場に出入りしたのも、そんなころだ。

この映画に、裕木奈江が出ていた。ある日、東映の撮影所に入っていくと、スタジオの入口付近で数人のスタッフが寄ってたかって靴を踏みつけている。彼らは私に気づくと「あっ、これ踏んでいいっすよ!」と半ば楽しそうに言うのだ。

それは、裕木奈江の靴だった。

当時、彼女のスケジュールは非常にタイトだった。ドラマの撮影、合間に雑誌の取材、学園祭ライブ出演、レコーディング…。撮影も深夜までかかることはザラ。おまけに彼女は当時横浜に住んでいたから、スタジオまでの移動にも時間がかかり、都内のホテルに宿泊し現場に通ったりしていた。

そんな状況だったから、彼女の都合で段取り通りに現場が進まないケースがままあり、ストレスのたまった若い現場スタッフたちが出演女優の靴を踏みつけるという事態にまでおよんでいたのだ。

もちろん私は、踏まなかった。自分の靴のかかとならよく踏むが、人の靴を踏む趣味はない。

裕木奈江には個人的興味はなかったが、週刊誌の記事がもとでバッシングに遭ったりし気の毒な印象がある。それも発端は、彼女があるドラマで演じた役柄がもたらしたイメージからだというのだから、なおさら気の毒だ。

人間、どこで好かれどこで嫌われるかなんて、わからないものだ。

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