志和:ビアガーデンでプロレスしてた
世の中にアミーゴと呼べる友人は少ないけれど、そんなすてきな友人に誘われて、新木場というところへ行ってきた。首都圏在住の方ならご存じの駅、東京ディズニーリゾートからさほど離れていない。
新木場のどこへ行ったのか…。実は、とある倉庫へ行ってきた。
夏の間、倉庫でビアガーデンを開き、プロレスをやっているのである(ん? プロレスの大会を開き、ビアガーデンをやっているのか。ま、どっちでもいいや)。
一般的にはほとんど知名度のないあんなレスラーやこんなレスラーが、一生懸命にプロレスをやっている。
入場料は500円、プラスドリンクorフードが500円。この引き換え券が哀愁漂い味わい深い。ついでに、倉庫脇にひっそりとめてあった車も味わい深い。
「アパッチ」「プロレス」「軍」という3種の言葉を組み合わせ「アパッチプロレス軍」…なんてすばらしいセンスなんだ。
200人入れれば超満員のちっちゃな会場。試合中にはレスラーは積極的に観客とコミュニケーションをとり、観客もレスラーとコミュニケーションをとる。みんなビールで一杯やりながら、場末の宴会場ノリで楽しそう。場外乱闘はリングの四方でまんべんなくやってくれ、ちゃんとスタッフが客を一時的に避難させ、乱闘が終わるとテーブルと椅子を元に戻してくれる。
私は、かっこよく洗練されて巧みなものよりも、下手で野暮ったいところがあっても人間臭いものが好きだ。だからアイドルも好きなのである。アイドルには、芸能というジャンルが持つ特有の泥臭さが常につきまとう。いい歳をしてアイドルのコンサートへ通う後ろめたさみたいなものも、すごく好きだ。
プロレスも、昔はそうだった。リングは常にうさん臭く、人間臭かった。プロレスしか食える場所を探せなかったドイツ系アメリカ人が、ナチスの残党を名乗ったり。素顔がやさしくて人気の出ない元フットボーラーが、泣く泣く覆面をかぶったり。哀しかったり、辛かったり、せつなかったりするのだけれど、そこに"プロレスラーの本当の闘い"があったし、リアルなドラマがあった。
でも最近は、会場の照明はやたら明るいし、技は高度になったけれど「高度なだけ」で退屈だし。本当はたいした表現力もないのに、かっこだけつけているレスラーを見ていると、「おいおい、いつから君は"自称アーティスト"になったんだい?」とかわいそうになってくる。
新木場の倉庫で、昔のプロレスと出会えた。人間の匂いが充満していた。なんか、泣けてきた。
ついでに、昔の自分とも出会えたような気がする。下手でいいし、かっこ悪くていい。自分らしくあれば、それがいちばんいい。
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