ナオP:オヤジ記者インターフォンとの激闘!
「ボクは君のことが大好きだった」…
黒川紀章さんご夫婦最後の会話を業界で最初にお伝えした。その舞台裏は…これがドラマです!
記者は張り込みに始まり張り込みに終わる、そう叩き込まれ16年。40歳になっても現場にへばり付いてるオヤジ記者ナオPです。
17時過ぎから故・黒川さん宅前に鬼デスクの指示で張り込み開始。報道陣の数はまたたく間に50人、100人、150人と膨れ上がる。
18時30分過ぎ、夕方のニュースが終わるとテレビクルーが引き上げ始め、徐々に人数は減っていく。19時あたりになると、50人ぐらいになっていた。
残った記者たちはみな、奥さんの若尾文子さんのコメントをもらおうと粘っている。でも、手持ち無沙汰はいかんともしがたく、お悔やみで届けられる花束を撮ったり、タクシーが出入りするたび、誰か芸能人が乗っていないかとカメラを向ける。
そして19時30分ごろ、NHK記者が「みなさん、若尾さんのコメントが欲しいと思います。でも、五月雨式にインターフォンを押すのも失礼だし、よけい態度を硬化される可能性もあるので、代表して聞くというのはどうですか」と提案。20社50人ほどの記者は、NHKに一任。
2分、3分…「おお、交渉してるぞ」とどこかの記者。これまで、ピンポーンと押しても、応答さえなかったからだ。さすがNHKと思いつつも、固唾を呑んで成り行きを見守る。
数分後、NHK記者が出てくると、ガッと記者たちが囲む。
「お手伝いさんが対応しました。『思いはわかりました。若尾さんには伝えておきますが、今日はムリとおっしゃると思いますよ』との対応」だったことを伝える。若尾さんが部屋に残っていることが確認できただけでも収穫と、みなそれぞれ会社に状況を報告。
そして30分後にもう一度、インターフォンを鳴らしますという確約もとったとのことで、交渉の糸口は残った。
20時過ぎ、NHK記者が再度、マンションの玄関ホールにあるインターフォンの部屋番号を押す。
2分…3分…「結局ダメだろうなぁ…」という空気が流れたそのとき、頭の上で丸を出しながら、駆けてくるNHK記者。まさに、裁判所前の「勝訴」の横断幕を広げながら駆けてくる記者の心境だ。
「みなさん、急いで準備してください。3分後に若尾さんがインターフォン越しに答えます」
しかし、インターフォンは玄関ホールにある。50人からの記者が入れるわけがない。代表質問になるのか、半信半疑になりながら、準備して駆け出す。
もちろんボクは、いち早く駆け出して真っ先に玄関ホールのインターフォンの真下をキープ。ボイスレコーダーをセッティング。テレビの記者たちもマイクを突き出してくる。
「各社、代表で1本だけマイクをくださーい」と、まん前に陣取ったどこかの放送局の記者が叫ぶ。こういう困難な状況のときには助け合いとなるところが現場の一体感だ。
そう思っているうちに、インターフォンは、次々に差し出されるマイクとボイスレコーダーで、まるで剣を突き刺された「黒ヒゲ危機一髪」の樽のようだ。
気がつけば、なんと、交渉してくれたNHK記者が後ろのほうへ追いやられてしまっている。
「NHKさん、前に出てきて質問してください」と、声をかける。なるべく前にこさせようとするあたりも、交渉成立させてくれたNHKの記者に花を持たせようという心配り。取材は、NHKの代表質問のような体裁をとった。
50人もの記者、カメラマン、テレビクルーが機材のこすれる音ひとつさせず、生唾も飲み込まずシーンとしている中、輪の後ろのほうで、「ここの住人の方に迷惑だから、どいてくれ」と管理人さんが虚しく怒鳴っている。
「すみません、5分だけ時間ください」と、いいつつ誰も動かない。50人の報道陣が一言も聞き漏らすまいと、狭い玄関ホールの中、シーンとなっている。
黒川さんのルーム番号が押され、インターフォンから若尾さんの声が聞こえた瞬間、みなホッとしたのと、これからが勝負! くぐもりながらも気丈に語り続ける若尾さんのかすかな声を一言も聞き漏らさずに収めていく。
そして、3分という短くも濃密な時間が流れ、「ボクは君のことが大好きだった」という夫婦最後の会話を語ったとき、その声は大女優・若尾文子ではなく、妻・黒川文子の声になっていた。
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